好き度
レーベル 岩波少年文庫
編訳 平岡敦
フランスもの15の短編集。全編新訳で、子供でも読みやすい明晰さ平易さにバランスが置かれていますが、ホラーな雰囲気は損なわれておらず、大人でも十分楽しめます。なんなら「今まで意味が取れてなかったけどこの翻訳なら分かる!」ってことがあるかも。
青ひげ/シャルル・ペロー
初っ端にこれを持ってくるとは攻めていますね。民話のイメージが強く、今まで読んできた訳の方が好きかも……。でもこの本のコンセプトに合った翻訳です。どんどん青髭が花嫁に迫ってくるところとか、どれだけ拭いても血が浮き上がってくる鍵を必死に磨く様子とかいいですよね。
コーヒー沸かし/テオフィル・ゴーティエ
王道「お館の夜はお化けのパーティー」もの。クラシカル。あまり面白くないな……今となっては。ちょっと分かりにくいなと思った。
幽霊/ギ・ド・モーパッサン
これもクラシカルな作品。タイトルもそうですが、シンプルにそぎ落とされた美しさがあります。いろいろ説明されないままなところがよい。出るのは分かっているのに主人公と一緒に心臓が飛び上がっちゃった。
沖の少女/ジュール・シュペルヴィエル
幻想小説?と思うような、ちょっと毛色の違う作品。寂しい街での暮らしの描写が素敵。これどういうことや……となりがちなタイプの小説ですが、最後にはっきりネタバラシしてくれます。哀しい怖い話。人々の昏い物思いから生まれた住人たちの街、とかであればSFにもなりそうです。
最初の舞踏会/レオノラ・カリントン
後書きにあるようにブラックユーモアがさく裂している楽しい作品。残酷童話みたいな感じです。ほのぼのとした冒頭からのメイドの顔剥ぎ!なんでかフランケンシュタインも思い出しました。国語の課題で続きを書けって言われたら「ヒトの味を覚えたとんでもない獣が解き放たれ、さまざまな舞踏会に出没しては人々を驚かせ気紛れに食い殺し颯爽と消え失せる遊びをしてまわる」にします。
消えたオノレ・シュブラック/ギヨーム・アポリネール
マリーローランサンの恋人って印象が強い(世界の伝記を愛読していたせい)アポリネールですが、小説も面白いなと思いました。銃を持った男に追い掛け回されてるんだから怖いんですよ、けどビジュアルは滑稽だからコメディみたいな感じもある。
壁抜け男/マルセル・エーメ
素晴らしい。今までタイトルだけ知っていて読んでないのを後悔しました。真面目でちょっと変かもしれないけどごく普通のリーマンがどんどんおかしくなっていくのも、すんごいリアルに人間を描いてる。これもちょっと喜劇っぽい。
空き家/モーリス・ルヴェル
主人公と一緒に息をつめて読んでしまいました。彼の苛立ち、焦り、怒り、もう一心同体になって読んじゃう心理描写がよい。これもドン!っていつか出てくるのは分かっているのに泥棒と同じように飛び上がっちゃった。好きですね。
心優しい恋人/アルフォンス・アレー
うげーっ!軽くてお洒落でナンセンスでグロ。ハッピーエンド♡じゃないんだよ…何を読まされたんだ…と脱力しそう。この短いさっぱりした描写で腸のホカホカねちょねちょした気持ち悪さを想像させるのすごいです。
恋愛結婚/エミール・ゾラ
第三者の淡々とした報告形式で人間の醜さが描かれる短編。最後に二人で死ねてまだよかったんじゃないかなと思っちゃう。ドラマとしてまとまりますもの。
怪事件/モーリス・ルブラン
ミステリは苦手なので、一番後回しで読んだ。……けど、犯人やトリックは気になっちゃうから早く教えて~とうずうずして読んだのに……人を食ったような話!やられた!重い話のあとにカジュアルな読み心地で一息つきます。
大いなる謎/アンドレ・ド・ロルド
科学が発達して心霊現象を解き明かすぞ!フロイトによる精神医学が流行って人間の心理で説明がつくぞ!みたいな時代特有のホラーを書いた作家って印象です、ロルド。予想通りに進むと思いきやラストにもう一段階。怪現象を解き明かすことが出来ても、それを受け止める人間の心はどうしようもない。
トト/ボワロー=ナルスジャック
鮮やかな掌編。違和感に気付いた時にはもう遅く、そのままアッと驚きのラストを迎えてしまう。叙述トリックって聞いたら最初からわかっちゃうから、何も聞かずに読んでね(これを読んでしまったら台無し)!
復讐/ジャン・レイ
どろりとした雰囲気で、この中じゃ一番怖いんじゃないでしょうか。安酒の匂いがプンプンする。鼠や虫に食いつくされる様は耽美のかけらもなくおぞましいだけ。
イールの女神像/プロスペル・メリメ
作中でキャラがうだうだ雑学披露、こういうの好きよ。息子の結婚話と女神像がどう重なっていくのかな?とワクワクする。途中でオチは読めるけど、どう持っていくのか、どう語られるのか、女神様はどうなるのかって最後まで楽しく追えます。古代の何かが絡むのかな?ってのは肩透かしだったかな、ただそれやると短編じゃなくなりそうだし当然かも。
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