無題・鉢文
諸国の歴史に通暁していると噂の僧であり、三郎も興味津々に部屋を訪ねた。変装の極意は観察にある。どれだけ詳細を知っているかが鍵なのだ。失礼しますと声をかけるとどうぞ、とがさついた声が応えた。色艶のよくない顔、ぎょろりとこちらを射抜くアーモンドアイ、松の実の瞳。「……潮江先輩?」唖然として呟くと、男の瞳にいたずらっ子のような光が浮かんだ。「変装の名人がいると言うからな、俺も負けておれんと思ったのだ」「私だと気付いておられたのですか?」「いや、年若い忍びと聞いてもしかしたらと思っただけだ」よく知った声で潮江は話した。
2024.03.02
2025.04.12
収蔵庫屑籠