諸国の歴史に通暁していると噂の僧であり、三郎も興味津々に部屋を訪ねた。変装の極意は観察にある。どれだけ詳細を知っているかが鍵なのだ。失礼しますと声をかけるとどうぞ、とがさついた声が応えた。色艶のよくない顔、ぎょろりとこちらを射抜くアーモンドアイ、松の実の瞳。
「……潮江先輩?」
唖然として呟くと、男の瞳にいたずらっ子のような光が浮かんだ。
「変装の名人がいると言うからな、俺も負けておれんと思ったのだ」
「私だと気付いておられたのですか?」
「いや、年若い忍びと聞いてもしかしたらと思っただけだ」
よく知った声で潮江は話した。
無題・鉢文
屑籠