好き度
タイトルだけは知っていてずっと読んだことがなかったミステリ。読みやすい・初心者にオススメ・面白い、などのランキングで絶対に挙げられている印象があります。
愛読書にはならないが、一度読む価値はあるなと思いました。ネタバレ回避して読むのがおすすめ。何も知らない状態で一度挑まないと無意味。なんならミステリだと知らない状態で読むのをおすすめ…と、この文章を読んだ段階ですでに無理なんですが!なるべく事前情報を消して、忘れて楽しみたい。それではネタバレしつつの感想メモ、読み終わってざっと書き出したものをはっつけているので整理していないですが。
最初ノリキツいかも〜だったが数十ページくらいで一気に進み出しました。長編なのに軽くて読みやすいのは助かる!欲を言えば長くしてキャラとエピソードを描くか、脇キャラと会話削って薄くしてもらえるともっと好みです。
ハードボイルド風ではあるがあくまで風で、カッコいい!渋い!な台詞には思えなかったです。キャラの哲学はあまり感じず、ストーリーの面白さで読ませてくれるタイプ。セリフはキャラ付けのためとしても大袈裟に軽薄な喋り方だなあと思っていたが、若者だと印象付けるための意図的な操作なんですかね。フリーターと思わせたい感じもありますね。時代の雰囲気を出す目的もありそうです。
トリックありきのミステリー。これにハァ?と思う人と、面白い!と思う人がいるはずですが、私はどちらかというと前者です。でも完全に無意味ではないから怒るのもなあ、だしという…。これオルゴールだよ〜と持ってきた箱がびっくり箱なのはよいけど、オルゴールのフリをするために質の良い音楽が流れる作りになっていてほしい、けどこの小説はややチープな音だな、みたいな感じです。
関西弁おっさんなのかお嬢様なのか分からない、と同じ部類のトリックで…ちょっと狡くない!?というので、しかし役割言葉を剥いでしまえば老人も若者と喋りは変わらないよね?とリアルではあるし、老人は終わりを待つ存在でなく今も未来もしっかり生きていく存在である、というテーマとリンクしたトリックで上手いし…メタ的だ〜…。
難易度としては叙述トリックだよ、どんでん返しだよ、と聞いているとだいぶ先に予想出来てしまう。そうでなくても半分くらいのところでピンときます。書いてあること、というよりは隠そうとしていることで叙述トリックやりたいんやな!と分かりやすいです。けっこう手がかりはくれていて、…同時にそりゃないぜってのもあるけど…、髪染めについて執拗に言及、変なファッションセンス、妹の存在が濃いわりに家族のことを明かさないのが不自然、この時代にこんなのある!?の連続、(現代パートも令和から見れば古いが)人物の喋りに時代を感じる、よくシーンが切り替わるので時代が違うor同一人物パターンかな?と推理させてくれます。どんでん返しというほどではありません。
節子が唐突だから誰かと同一人物かな?と予想はしつつ、安さんが出てきたあたりで完全に二人の正体の予想はつきまして、だがまさかそんな…と半信半疑、そこからバラバラに見えた事象が収束していく様はお見事。あと周りまでみんながみんなご老体なのは流石にビックリしました。
老人の生、からの性欲がテーマなんですかね?初っ端からドギツイ。もう少し大人の恋愛、人生の甘さも苦さも知ったカッコいい爺であってほしかったけど…長生きしてそんなイキってんの?みたいな感じもあり…あえてこのテーマのためにか?それともキャラクターはトリックの犠牲となったのか?いやいや小説ステレオタイプの「大人、老人」なんて偏見を持ってる君はさぁ、爺婆の性欲を気持ち悪いと思っているのかい?とこちらの感覚にも切り込んでくるのが痛いとこつかれた!って感じですね。
キャラが漫画チック、ストーリーがドラマティックなのでまさか劇中劇か?(役者エキストラもしてるとあったので)と警戒しましたが、そこまでトリックありきではなかった、がやりたいこと優先ではあるなと感じました。探偵パートの聞き込みがスムーズすぎてちょっと笑っちゃいます。
トリックを隠すためかあんまり掘られない心理描写やキャラクターたちの中、さくらの造形はあのしょうもない頭の弱さ、他責思考、生き汚さ、いやらしさが生々しくて他のキャラよりリアルに感じました。詐欺の熱狂していく会場描写もいいですね。にしてもこの女に惚れるの主人公ヤバすぎる…若い時の経験のせいか?ヤバい女に惹かれるタイプなんか…?普通に殺人に関わった女なんだよね…とドン引きでもありますが…。
タイトルもミスリードを誘っていて、過去の犯罪回想とか死んだ女や犯人の女でも慕ってるのかなとも推理しちゃうんだけど、最後でタイトル回収&引用提示されててよかったです。でもよく考えたら言うほど葉桜かなって気はじわじわ来ています。
ミステリであるとともにすっごい恋愛話で、ラストあそこで終わるのも恋愛小説としては100点満点、推理物としては続きが欲しくなります。読者を騙すことはできてたけど劇中トリック割れてからも波がこなかったし、蓬莱事件あれでええんですか!?笑
昔のヤクザ密偵パート、現在の押し売り探偵パート、さくらの犯罪パートどれも面白いがうまく絡んでるか?このキャラ邪魔じゃない?というのはちょっと審議中…社長の搾取してやらぁ!演説は逆にああいうのもっと書いてくれてよいです。トリックからして現代テーマを扱うメタ的ミステリなので、そこらへん重厚にしてもらって全然構わなかった。
全然違う話ですが、短歌は詠む人の年齢や生い立ちなどその人自身がどういう「私」を持つのか?で同じ歌でも全然評価が違うっての連想しました。
総括、読んでよかった。