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あかるい花束

参考資料(短歌)

好き度 3.7

作者 岡本真帆
出版社 ナナロク社

サーモン色とか珊瑚色とかいうのでしょうか、綺麗なカバーの本です。口語かつ現代かな違いの歌人。第二歌集。

いくつか好きな歌を引きます。

自転車でコンビニへゆく粗大ゴミシールを自転車に貼るために

19ページ あかるい花束

これが終わったらおまえともお別れだな。最後の仕事頑張ろうな。おまえを捨てるための仕事を……。丁重な儀式もなく、日常の延長でふらっと買ってきてペタッと貼ればそれでもうゴミになる自転車。でも最後までいつも通りでいたいってチャリは思ってるかもしれないね。いいやチャリに気持ちはないから人間側の気分の問題かな。

まぼろしとまぶしい過去って似てるから間違えそうになるけど 桜

28ページ ただしくよりたのしく

大事に大事にしているほど実際よりも綺麗な形で磨き上げられていくからね。もはや実際にあったことなのか自分の夢なのか分からなくなるくらい。あったかくて少し霞んだ光を見上げると桜がぶわっと花開いてる景色。夢幻でなく満開の春。

幸福な沈黙そして幸福な頷きあいの真ん中にパフェ

33ページ 東京タワー

言葉もいらない二人に似合う食べ物はパフェなんだよな。

愛されるために鮫からさめになりやわらかく抱き寄せる霧雨

39ページ 風と暮らす

言葉遊びに弱いので……鮫・さめ・霧雨のサメがよいですね。ひそっとした響きのサ、柔らかく閉じるメ。

夏が好き すべてのものが永遠のような顔してそうじゃないから

46ページ ワルツ、はつなつ

分かりますでもよくぞそう歌ってくれました……!タイプの歌。この夏を永遠にしたいなあ、褪せることなく閉じ込めたい、ではなく、最初から不可能だと悟ったうえで輝きを愛しむ。前半のきらきらした色が後半で翳るの好き。

呼ばれているような気がして振り返る 薄暗闇の夏の回廊

57ページ 光のそばで

しんとした、自分の靴音だけが響く石造りの足元。日はまだ高いけれどここは陰になっていて。歴史が詰まった回廊。誰かの思いも私の思いも蓄積されていく場所。なにか冒険がありそうな場所。秘密を抱えた場所。夏の魔物。

乱丁のある文庫本抱きしめる 愛すよたったひとつの傷を

66ページ 空っぽの花器

乱丁自体が少ないし、あるにしてもどのページが混ざってしまうのかは一つ一つ違いますから。不良品じゃないよ、そのかけがえのない傷があなたなんだよ。文庫本なんだから売っぱらってしまうことだって容易いけど、そんなことはしない。ぎゅっと離さない。

あのみずうみで泳ぐことはない その事実がわたしに書かせている千年紀

114ページ 夜にガーベラ

届かぬ思い叶わぬ願いそういうものが大好き。

ラブソング以外の愛もあるんだよ 鳩になってもきみが分かるよ

122ページ

家族愛とか友愛とかそういうこと……?からの後半がよいですね。ラブソング以外どころかラブソング以上のとんでもなく深い愛じゃないですか。それとも鳩の鳴き声のこと?

スノードームのなかの小さな遊園地 声帯はもう君を忘れて

155ページ 小箱

お土産はずっと飾られているし、遊園地に行ったことも忘れていないし、でも君を呼ぶ時の声の大きさ、高さ、トーン、そういったことを……身体はもう君を忘れてしまった。綺麗な箱の中に眺められるものになってしまった。

夢で会って目が覚めてももう寂しくない 朝がわたしの底まで届く

157ページ 小箱

朝の光が細く入るベッドの上で目が覚めて、カーテンを開けて、一度目をつむって大きく深呼吸して…そんな風景。

あなたとの日々をなんども再上映してる小さな部屋にまた春

157ページ 小箱

忘れられなくても人生は続いていくので。悲しいことも嬉しいことも何度も何度もあるので。春になったらなったで、春にあなたと言ったことしたこといろんなことを再上映するんだけれども。

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