好き度
作者 宇野なずき
発行 2021年3月
「最初からやり直してください」と同様こちらもBOOTHで購入可能。気になった方はぜひお迎えしてください(回し者ではありませんよ)。
マットな表紙は黒に桜の花弁が散らされ、シンプルに白文字でタイトルと作者名が記されています。本文用紙は白で、目次の次から1ページに三首ずつ。
少し好きな歌を引きます。
ベランダが花で汚れる はじまりの予感を雨が連れ去っていく
4ページ 「花で汚れる」
歌集と連作のタイトルにもなっている、始まりを飾る一首。散らされ飛んできた桜の花びらがベランダに落ちている春の雨の日、と情景は分かりやすいですが、初っ端から暗いですね……。
春の訪れでも潔い散り際でも大切なメッセージでもなく、ただベランダを汚すものである花びら。せっかく何かが変わりそうなものを無惨にも奪い取っていく雨。何の祝福にもならない惨めな、ゴミ袋に詰められるだけの、薄汚れたコンクリートに張り付くだけの、花びら。冷たく身体を冷やす雨に打たれる花びら。
ふたつめ。
欲しくない缶コーヒーを奢られて社会の犠牲者となった証
13ページ 「全知全能」
これはああ分かる、けどこんな表現出来たのか……!タイプの歌ですね。会社で頼むよ〜とかお疲れ様〜とかであげたり貰ったりするのって絶対コーヒー、しかも缶コーヒーなの。ブラック無糖のやつ。もしかしたら他のものが好きかもしれないし、いらないかもしれないんだけど。そんなもの考えずに大人の飲み物、お仕事をする者同士のやり取りには缶コーヒーなんですよね。別に悪い意味じゃないんですよ、感謝や労りの証としてなんだけど。大人として認められたという嬉しさではなく、歯車として毎日頑張らなきゃいけないそこへ迎えられちゃったねという。
みっつめ。
きみ行きの電車は存在しなくなり食費へ変わっていく切符代
80ページ「異常無し」
別れたから恋人の元へ行く分のお金が浮いて食費になってるよ、ってのを短歌で表すとこうなるんだ〜すご……という歌。電車に乗る必要がない、電車を意識しない、というのが「存在しなくなり」と言い切られてしまう!その向こうのきみのことも忘れる、とかじゃなく存在しなくなるのでしょう。まるで始めからなかったかのように。でもこう言っている今はまだ覚えていて、ふっと思い出して、何の感情もないことに気づいてしまったんだなと。
短歌はほんとに素敵ね〜とぱらぱら眺めているだけなので、間違ったこと言ってたらごめんなさいです……。
好みとしては「最初からやり直してください」に軍配があがりますが、こちらも素敵でした。