放置した現代ファンタジー、たぶん留文の予定
6年は組善法寺伊作の名は全校中に知れ渡っていた。つまり保健委員会に6年連続選出された先輩であり、夏季休暇の宿題不備のため9月いっぱい補習漬けだった同級生であり、外出の度トラブルに巻き込まれる友人であり、という残念っぷりをである。ここで儚げに微笑んで見せるのが似合わぬのもまた善法寺という少年で、なんだかんだ図太い男であり、哀しきイケメンというレッテルはごく一部に過ぎなかった。
「よろしく。僕は善法寺伊作。最初はちゃんと出席番号順に二人部屋だったんだけど、空いてしまって」
嘘はついていない。このテクニックは善法寺の十八番である。
「なんか悪いな。一人で気楽だったろ?気になることがあれば言ってくれ。寮生活は初めてだから気に触るかもしれねえし」
顔立ちはキツいし口調も優しいわけではないが、なかなか人がよさそうだと失礼なことを考える。
「よければ校内を案内するよ。中高一貫だから転入生は珍しいんだ。みんな面白がってくるけど、悪い奴らじゃないからさ」
「おう、ありがとな」
「ここがい組。特進クラスじゃないけど、頭いい奴がいるからそれっぽく見える」
「案外トゲのある言い方するんだな」
「伊作、隣の彼は?」
窓から顔を出した少年は色白の細面で、いかにも秀才と感じられた。
「転入生の食満くん。小学校は僕らと一緒みたいだよ。途中で引っ越して、またこっちに来たんだって」
「こっちは立花仙蔵。合同授業とかでよく話すんだよ」
「食満くんか」
目に生き生きとした光を浮かべ、仙蔵は面白そうに留三郎を眺め渡す。