更新停滞・作品ほぼ消滅中

無題・室町成長死ネタ

屑籠収蔵庫

死ネタで描こうとしてたらしい数百文字。

食満が三年ぶりに学園の門をくぐった時、四人はすでに荷をほどいていた。

手筒、脚半、頭巾、着物の切れ端。苦無、きり、縄、小刀。兵法の写し。筆。換えの草履。少しばかりの品をあらため皆で分け合った。

残された荷は一つ一つ数え上げても小一時間とかからなかった。簡素に小さな風呂敷にまとめていた。同級生には野盗のせいではないだろうと一瞥して分かった。拾い上げた者の手も入っていないだろうと。それほどに潮江そのものだった。もちろん細々とした荷はすべて忍びの持ち物らしく、一見して潮江と分かる痕跡は何にもなかった。ただ何回も修理して擦り切れた縁だとか、磨き込んでも光らなくなった艶が取れた取手だとかに、大切に使い続けてきた主の姿が浮かび上がるようだった。

遺品と短い文を届けた使者は、学園長と二言三言交わした後に立ち去っていた。食満はすれ違っただけだったが、到着時から見ていた立花も何もなかったと言っていたから、本当に立ち寄っただけなのだろう。形見分けに何かいらないか、などと聞かれることすら煩わしかったのかもしれない。薄情だなと一瞬思いかけたが、下っ端の忍びが大切にされるならばそれはそれで嫌な職場だ。

少し休憩しようか、と善法寺が提案し、みな賛成した。留三郎は散歩でもしてきたら。私も委員会を見に行こうか、長次はどうする?…職員室に寄る。そうか仙蔵は?私はここで休む。留三郎、おまえは歩いた方がいい、ほら庭にでも行け。

追い出されるようにして池のほとりを歩いた。後輩たちの元へ行こうか。だが突然の訪問に慌てるばかりの戸松が想像されて気が引けた。先生方への挨拶も気が乗らない。どこへ行くでもなく歩くうち、いつの間にか長屋の方へ来ていた。

「学園とあの城とは微妙な関係だろう」
長屋から上級生らしき話し声が聞こえた。
「3、4年前の生徒一人のためにわざわざ訪問するとは、よほどの厚遇だよ」
「あの先輩、すごく信頼されていたんですかね」
「そうだろうが、それだけで動くとは思えない。だろ?」
深青の制服がちらりと動いた。
「…まあ、憶測の域を出ない。あんまり情報のないことをベラベラ喋るもんでもないか」
食満の気配に気づいたらしい。別に話し続けていればよいだろうに。面識のない先輩が死んだからとて、同情する必要はないのだ。今日は至る所で同じ話がされているはずだ。学園との利害関係って?潮江先輩って会計委員会で厳しかったっていう…?学園にかかわる任務をしていたらしいよ。え、本当に?俺聞いたぜ、学園を挟んで敵方と交渉していた際に──。興奮と、怯えと、戸惑いと。学園長室から広がったさざなみは学園中を揺らす。かつての自分たちと同様に。

「留三郎、ちょっと」
静かに呼ばれた先、静かに座る善法寺のひざ元に袋槍があった。布にまかれた穂先を外しながら善法寺が言う。
「遺愛の品はおまえにと先生方がおっしゃった」
彼のまっすぐな視線が痛く、食満は目を逸らした。
「……鉄は貴重だ。学園に寄付したい」
「これは僕たち全員の意見だ。おまえが持っているべきだよ」
全員か。食満は平坦な声で答えた。
「俺たちの中なら仙蔵だろう。あいつはずっと同室だったんだ」
「その仙蔵がおまえにと言ってるんだよ」
「俺はいらない」
「留三郎!」
背を向けて歩き出した食満に向かって善法寺は抗議の声を上げたが、聞いてやる気はなかった。
みな何もわかっちゃいない。全員の意見?違う。一番ありえない選択肢だ。全員の中にもう潮江文次郎は含まれていないと、はっきり突きつけられた。あいつは「留三郎なんかに俺の得物をやるものか」と不遜な笑みを浮かべるはずだ。絶対に受け取るわけにいかない。

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