田畑を耕し、村人と世間話をし、子供達と遊び、若衆宿で大騒ぎ。なんてことのない平和で幸せな日常だ。作った微笑は次第に心からの笑顔に変わっていった。
「俺、忍びに向いてないかもしれない」
一人が零した言葉を諌める者はいなかった。潮江ですら例外ではない。あれほどなりたかった忍びの道も、愛着でしかないのではないか。思い詰めたように漏らす同胞を叱り飛ばすどころか、同じような思いがあることに気付いたのだった。
学園にいた時もこれほど穏やかな日常が楽しかったことはない──学園にいた時よりも?仲間たちに囲まれ鍛錬に明け暮れていた、充実した毎日、それより村人ごっこに興じている今が幸せだと思うのだろうか。まだ何も知らなかった頃の自分なら今の自分を許さないだろう。
うつむいて考え込んでいる潮江の肩を、隣の男が小さくつついた。ちょうどリーダー格の男が話し終わるところだった。
「──私たちは何も聞いていないし言っていない。いいな」