更新停滞・作品ほぼ消滅中

379.

修復中作品収蔵庫

なんでもない散髪の一シーン。室町タカ文。超短いのにやりかけ。

冬のある朝、早くに目が覚めた斎藤は散歩することにした。朝の校庭は意外と人が少ない。夜中鍛錬に励んでいた生徒たちが自室へ戻り、また騒がしい昼を迎える前のわずかな静寂が広がっている。考え事をするにはうってつけである。

「新作が浮かばないんだよねえ…」

寝巻き姿で振り向いた潮江は、気まずそうにおはようと返した。黒々とした髪のあちこちが跳ねているのはいつも通りとして、
「それ寝癖?」
「いや…」
自分で切ったらこうなった、とむっつりと言う。
「ダメダメ!冷静に切らないと」
慌てて静止した。
「俺に切らせてよ」

「目、つむってて」
素直に瞼を閉じた顔が幼く見えて、斎藤は意外に思った。ギュッと寄せた眉間の皺は取れそうになく、我慢するようにへの字に結んだ口もまったく可愛げのないものだけど。口を開けば鍛錬鍛錬とうるさいこの先輩は、黙っていれば圧がなくて、そう悪くもないかもしれない。髪の毛はまったく褒められたものじゃないけれどね、と鋏をいれる。

目の下に鎮座する隈さえなければ可愛いのかもしれないなあ。

「おまえは髪結いとしてやってきたんだろ。自分が何者か分かってる。十分な強みだろう」
「隈が出来てる。根を詰めすぎるなよ」
「潮江君がそれ言う?」
笑いながら返したが、潮江は真面目に続けた。

「分からんところがあれば聞け。時間があれば教えてやる」
「潮江くんには聞きたくないなあ」
「なんだ人が親切に言っているのに」
「はい、出来た」
「じゃあまたね、潮江くん」
「おう」

今度はちゃんと結わせてくれないかな、とタカ丸は潮江を見送った。

送信中です

×

※コメントは最大1000文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!