エキゾチックが描けないと気付いたんだと思います。あと革命とか王族設定って適当に書いたらしいが恥ずかしい。メモそのままです。
小国家が乱立する東大陸の奥深く、極東のそのまた向こうにその国はあった。
かつて曇ることなき輝きで一面を照らしたという黄金の広間も、もいでは炭酸酒とともに溶けていった真珠の樹林も、一歩歩くたび音楽が響き渡ったという大通りも、すべては朽ち果てた山の中に埋もれていた。
重臣たちに囲まれて、留三郎はうんざりしていた。
「若様は大学へ行くべきです」
「すぐ決めろっつっても、俺はついこの前まで一族に数えられてさえなかったんだぜ」
廊下へ逃れた留三郎は侍従へ愚痴をこぼした。同い年の彼は頭もよく、無駄なことは言わず、頼りになる友人のような仲である。彼自身が貧しい生まれで苦労して今の地位にあるためか、王子にあるまじき言葉遣いにも眉をひそめずにいてくれるところが有難い。だが今回は固い言葉が返ってきた。
「大臣が焦る理由も分かっておいででしょう」
「おまえまでお偉方の肩を持つのか?」
「一手間違えれば国が滅ぶ。賭けに値する者がしかるべき時にいてこそ出来る。……ご自分でもお分かりなのでは」
表情を崩さない長次に留三郎は肩をすくめた。
「それにしても急すぎる。直情で突っ走るわけにゃいかないだろ」
「その姿勢が──」
反論しようと長次が口を開きかけたところで回廊に人影がさす。
「今は日々情勢が変わるような状況でございますから。若様がご聡明な分期待も高まりましょう」
入口に待機していた作兵衛も長次に加勢した。
村人であれば何百人と入りそうな広さにもまだ慣れない。毎晩使うシーツや寝間着に少しでもシミがつけば瞬く間に払い下げられる。透かし彫りを多用した見事な調度品には真白な名木だけが使われている。膨大な財と時間をかけてこの部屋は完璧な純白を保っている。
「殿下、翁がお目にかかりたいと」
「翁が?」
王族どころか国王にも頭を垂れる必要がない存在とされ、滅多に人前に姿を見せない。もちろん留三郎は姿を見たことがなく、実在するかどうかさえ怪しいものだと思っていた。
「聞いたことくらいあるじゃろう」
留三郎はためらいながら手を触れた。
「俺はまだこの書を見ることが許されていません」
「よい……そなたは知るべきじゃ」
「六人は各地に散らばってしまったと言います。若様が滞在なさる国にも一人……薬師として動く可能性が高いかと。かの英雄はあらゆる傷を癒やし、慈愛を注ぎ、ともに戦場に立ったと伝わりますから」(ここで伊作いい感じにもっとく。実際とのギャップ)
「旅ははじめて?」
「いや、この国は初めてだが」
「どうりで雛みたいに歩くと思ったよ」
穏やかな顔をしているくせに結構失礼な男である。
「ここはその靴じゃ歩きにくい。予備を貸すから履き替えなよ」
「薬師見習いの伊作くんだ」
「やあ、よろしく」
「……よろしく」
待ち合わせ場所に突然現れた伊作にいささかの動揺もないように見えた長次だったが、差し出された片手には面食らったようで、返答にやや間が開いた。
「君たちの国ではしない?握手だよ。親愛を込めた挨拶さ」
「留三郎、君も」
掴んだ右手は思いのほかガッシリと厚く、あたたかかった。
「二人はどういう関係なんだい」
「どういう意味だ」
「友達でも同僚でも上司と部下にも見えないからさ。聞いちゃいけなかった?」
さりげなく最後の一言を付け加えるあたり、お人好しであっても馬鹿ではなさそうだ。
「昔からの馴染みだよ。仕事じゃ俺が上なだけだ」
すべてを明かすことはないが嘘を吐く必要もない。そうなんだ、と伊作はそれ以上の興味はないようだった。