なんちゃってファンタジー仙文。何を書きたかったか忘れて放置。
「ああ疲れた──夕飯どうする?」
珍しく文次郎の方が先に作業を止めると仙蔵に声をかけた。もうそんな時間か、と仙蔵はとっくに日の沈んだ山の端を見つめる。今日の当番は自分だった。
「月見うどん」
「月見うどん?聞いたことないな」
「ニッポンの郷土料理だと」
「へえ、これまた珍しいもんを」
仙蔵がデバイスを素早く操作する。その間に文次郎は袋から小鍋と一食パックを取り出した。毎日レーションですませば楽ではあるが、完全栄養食といえどもやはり不足する成分があることと、心理的にも伝統的な食事が効果的であることから調理が推奨されている。二人の所属する研究センターは優良認定施設ということもあり、日に一度は火を使うべしと通達を出していた。指定時間通りにタイマーをセットする。
「黄身を月に見立てる。歴史は日本の中じゃ浅い方だ」
「詳しく残っているんだな」
まだ冷たいままの麺をすすりながら文次郎が画面を横目で見る。仙蔵が呆れたように
「またおまえは加熱時間を無視して……」
「これで十分だろ」
気にするでもなく具を口に運ぶ。口の端をぬぐって舌鼓を打つ。
「ん、うまいなコレ」
「色も綺麗だ。これは魚をすりつぶしたものらしい」
文次郎の器から素早くつまみ食いした仙蔵が説明する、途端に相棒も目を見張る。
「おお……本当にうまいな」
「昔の人類もこうやって月を見ていたのかもしれんな」
しみじみと仙蔵が月を見上げ、つられて文次郎も遠く赤い光を見つめた。
二人がこの任務に就いて2年が経つ。見習い身分でありまだまだ若輩者だが、立派な戦力の一部である。宇宙は広く数えきれないほど星は存在する。各銀河系に派遣する隊員は何人いても足りることはなく、迅速な任務遂行が求められ翌日には次の惑星に到着、というスケジュールも珍しくない。
「明日のルートチェックしておくか」
「……まあ、もう少し後でもいいんじゃないか」
赤い日が沈んでいく。明日にはこの宇宙に散らばるとはとても思えない月の、輝かしい赤光を眺めながら、二人はそっと手を握った。