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雨の国

屑籠収蔵庫

雨のやまない国ってファンタジーに取り憑かれていた時期があったらしい

雨はもうひと月も続いていた。初めは喜んだ人々も今では不安げに顔を合わせ、話題は今年蒔いた種のことばかり。

そして時は過ぎた。何千年もの時が。

「『街』ってのはまだ遠いのか?」
「あと少しだよ」
留三郎が濡れた黒髪を掻き上げながら言えば、伊作は水を被ったようにずぶ濡れの栗色の髪を絞りつつ答えた。
「ここでも降っているってのに本当にあるのか?」
「ありがたいご本のお告げだよ?試してみる価値はある」
「その台詞、何度目だと思ってる」
留三郎は渋い顔をした。あらゆる手段を講じるべきだと方針が変わってから、休む間もなく任務についている。仕事があること自体はいい──夢物語のような戯言を根拠としていなければの話だ。

「……雨がない……」
「おまえたちは外の人間か」
「ああ……」
「そんななりでは怪しまれる。とりあえず変えてやるから来い」
肩につく程度の髪をぞんざいに括り、洒落っ気のしの字もない地味な鼠色の衣を着た男に『そんななり』呼ばわりされるのは不本意だが仕方ない。

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